住宅計画とは
住宅の建築計画には大きく分けて2つの意味があります。
ひとつは学問としての側面。これは、調査・分析をして今後の方針となる住宅の方向性を示す学術的な意味合いを持ちます。
そしてもうひとつは、住宅を具体的なかたちに設計する前段階の「計画」です。
ここでは、学問的な側面ではなく、具体的なかたちとしての「計画」について説明をしようと思います。
では、具体的なかたちとしての「住宅計画」とは何でしょうか?
国が定める建築士事務所での標準的な業務では、
- 調査・機能的プログラム・規模の検証・企画
- 基本設計(機能的プログラムと空間、建築仕様・設備仕様・概算)
- 実施設計(詳細設計各部の決定)
- 工事標準監理
- 付加的な業務
という流れが定められています。
1と2が、いわゆるプランニングの段階、基本設計と呼ばれるものです。
建築主の要望などを聞き取りながらプランニングを進めていきます。
3以降が実施設計、工事監理と呼ばれるもので、この段階ではすでにプランはほぼ確定している状態で、詳細設計では建築基準法などに細かく照らし合わせ、実際にその建物が建築可能科どうか、というところまで検討をしていきます。
最も重要なのは基本設計
住宅づくりを進める上では、基本設計が最も重要な段階です。
なぜなら、この段階で建物の方向性が決まってしまうからです。
例えば、2階建てがいいのか3階建てがいいのか。
風通しの良い家がいいのか、収納が多いほうが良いのか。
このような要望は基本設計段階で組み込みをしていきます。
実施設計については、基本設計段階でのプランを「検討」に重きを置いて進めていくもの、と考えると良いでしょう。
当然ながら、基本設計段階でもある程度検討をしながら進めていきますが、詳細設計でするような細かな部分まで検討をしていると、膨大な時間がかかり、基本設計がなかなか進みません。
実施設計の段階では、基本設計で設計したプランをいかに技術的にクリアしていくか、ということを念頭に置き進めていきますので、基本設計から大きく設計が変わることは無いのです。
当然ながら、設計を進める上では、当初想定していなかった変更もあります。
しかし、実施設計段階になってから、基本設計段階の設計方針に関わるような重大な変更がある場合は、構造設計や設備設計、必要な法手続きにも影響を与える可能性があります。
設計や法手続きについては、費用が発生するものもありますから、施主(建て主)の負担が増えてしまうこともあるでしょう。
こういったことを避けるためにも、基本設計段階で建築計画を十分に練らなければなりません。
建築主が考えなくてはならないことは、この基本設計段階を通して、その会社なり、担当者なりが信頼が出来るかどうか、です。
先程の順序にも示した通り、基本設計段階が終わってから、詳細な設計に入ります。
通常であれば、詳細設計に入る時点で、建物の強さを計算する、構造計算や、法律的な調査を入れることになります。
当然、これらの費用は建築主が負担することになりますので、いざ実施設計段階に入って色々な問題が起きた際、その問題を技術的にはもちろん、誠意を持って対応してくれるかが重要なのです。
監理を任せられる業者かどうかが大事
さらに、最終的には監理を任せることになります。
この場合の監理は、「管理」とは異なり、建築主の代理人として、現場が滞りなく、建築計画通りに進んでいるかをチェックし、それを建築主に伝える、というような役割を指します。
建築基準法第二条6項に「その者の責任において工事を設計図書と照合し、それが設計図書の通りに実施されているか否かを確認する。」と規定されているのが、監理です。
工事現場へは必ず監理者を設けなければなりませんが、監理は建築主の代理人とも呼べる存在ですので、現場の「管理」と意見が食い違うこともあります。
これとは別に「現場管理」もいます。
これはいわゆる、現場監督のことで、現場そのものが工程通りに進んでいるか、安全に作業スペースを確保できているか、などを「管理」する役割を持ちます。
一般的な「管理」だと考えて問題ありません。
現場管理からすれば、工程通りに現場を進めることが重要です。
しかし、設計通りに進んでいない箇所があったらどうでしょうか?「監理」が指摘する必要があります。
建築現場というのは意外と設計通りには進みません。特に住宅となると例えば壁紙の色を間違えたり、無垢床を別の床材で施工してしまったり、ひどいものになると、そもそもレイアウトが違ったりします。
まだ家を建てたことが無い方にとっては、信じられないかも知れませんが、こういったことが結構起こるのが住宅建築なのです。
そこを建築主に代わって、チェックし、指摘するのが「監理」の役割なのです。
だからこそ、建築基準法によって定められているのです。