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コンクリートの養生(ようじょう)とはなにか

木造の戸建てであっても基礎部分はコンクリートですし、車庫や庭もコンクリートを使うこともあるでしょう。

コンクリートの養生(ようじょう)については結構奥が深いです。正しい知識を持っておくことで施工中の不安を減らしたり、正しい施行か判断できます。

簡単に言えば、「養生」とはコンクリートがうまく固まるようにすることです。

 

時間勝負のコンクリート打ち込み

戸建ての場合、基礎部分のコンクリートについて知っておけば十分だとは思いますので、ここでは主に基礎のコンクリート養生についてお話します。

コンクリートは固まると非常に固くなりますが、生コンと呼ばれる固まる前の状態は非常にデリケートです。放っておくと固まってしまったり、品質が悪くなるためミキサー車と呼ばれる特殊な車で常に生コンクリートをかき混ぜながら現場まで運んできます。

しかも、コンクリートを作ってから実際に使い終わるまでの時間は以下のように決められています。使い終わり、とは打ち込み完了までの時間です。

  • 外気温が25℃未満のときは120分以内
  • 外気温が25℃以上の時は90分以内

つまり、夏場の場合は一刻もはやく打ち込みをしなくてはなりません。時間が決まっていますので、基礎屋さんは現場ごとにコンクリートを用意してくれるコンクリート屋さんを探して、手配することになります。

しかも、大抵の場合1台のミキサー車では基礎コンクリートは足りませんので、少なくとも2台分用意することになります。そのため、タイムスケジュールをあらかじめ決めておいて、タイミングよく手配する必要があります。

さらに、最初のコンクリートに対し、追加のコンクリート(うち重ね、と呼びます)を入れて良い時間も決まっています。

  • うち重ね(うちかさね)は外気温が25℃未満のときは150分以内
  • うち重ね(うちかさね)は外気温が25℃以上の時は120分以内

 

つまり、コンクリートの打設は一日でやらないといけません。上記の時間を過ぎてしまうと、コンクリートの一体化が甘くなり、強度に問題が出てしまいます。

時間との勝負なのでコンクリート打設は気を遣う工程なのです。

 

スランプ値

生コンクリートの硬さも規定で決められています。スランプ試験と呼ばれる方法で硬さを測定します。

ざっくり言うと、生コンを小さな山のようにしてそれがどのくらい崩れたか、で計測します。崩れた大きさを測るので、数字が大きいほど崩れているということになります。

スランプ試験によって出る値をスランプ値(ち)と呼びます。このスランプ値が15~18cmが適正な値になります。

さすがにスランプ値の確認を施主本人がすることは無いと思いますので、スランプ値があるんだな、という程度の認識があれば良いと思います。

コンクリートについての細かい規定は、国土交通省による、「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」や、日本建築学による建築標準仕様書のコンクリートカテゴリ(JASS5)で見ることができます。

 

 

コンクリート養生の種類

生コンクリートを無事に打ち込んだら、今度はコンクリートがうまく固まるようにしなくてはなりません。放っておけばいいのか、というとそうでもないのです。

この、固まるまでの期間を養生期間と呼び、特に戸建ての基礎工事の場合、コンクリートを打ち込んでから3~5日くらいの期間を「養生」と呼びます。

養生の方法にはいくつかありますが、戸建ての場合は基本的に放置しておくことになります。

ただし、ものすごく暑い夏の日とか、氷点下になってしまう冬の日は、放置するだけではコンクリートに問題が出る可能性があります。

意外と思うかも知れませんが、コンクリートは乾くから固まるのではなく、化学反応によって固い成分が出来上がるために固まるのです。

この化学反応のことを水和反応(すいわはんのう)と呼びますが、これは覚えてなくても大丈夫です。乾燥させるわけではない、ということが重要です。

この化学反応を起こすのに最も良い環境、つまり、コンクリートにとって最適の環境は、温度17度~23度の水の中です。実は水中にあるほうがコンクリートは固くなるのです。

そのため、あまりにも暑い夏の日はコンクリートにとって、環境としてはあまりよくないため、水を散布したりすることがあります。

もっと気を遣っている基礎屋さんであれば、基礎コンクリートに水を張ったり、ブルーシートなどで湿度を保てるようにすることもあります。

もし基礎コンクリートについて話すことがあれば、養生方法はどんな方法か、聞いてみるのもありだと思います。

こちらの質問にちゃんと回答出来ない場合は、その施工会社には多少の不安が残ります。施工会社は現場管理を行いますので、クオリティチェックをしなくてはなりません。クオリティチェックをするためには知識が必要ですから、どうやれば良い基礎が出来上がるかを知らなければならないからです。

では、養生の種類を簡単に記載しておきます。戸建ての場合、使う可能性のある養生方法です。他にもたくさんありますが、もしここに載っていない養生方法でやります、と言われた場合、正しいかどうか調べることも必要です。

 

湛水養生(たんすいようじょう)

基礎の型枠を高くしておき、基礎上端から全て水の中に沈めてしまう方法。表面に水を張るので、養生効果が高いです。

冬に実施する場合は凍ってしまうと逆効果になるので、凍らないように水深を深くするか、別の方法を取ります。

基礎の立ち上がり上端より上に型枠を組む、というのはなかなやりませんが、その立ち上がりを利用して水を張るのは手法としてあります。

 

散水養生(さんすいようじょう)

これはもしかすると見たことがあるかも知れません。基礎だけでなく、例えばあとから家の車庫をコンクリートで作ったり、玄関ポーチを作ったり、という場合にホースで水を撒いたりします。

こだわりの現場だとタイマーで自動的に散布する、という場合もあります。うまくまかないとムラが出来たりしますが、何もせず乾燥してしまうよりはずっと良いです。

 

湿布養生(しっぷようじょう)

コンクリートを湿らせたあとに、ブルーシートなどで覆い、水分が蒸発することを防ぎます。戸建ての現場の場合、つきっきりで管理することがなかなか難しいので、例えば一日一回水を撒いてシートで覆う、というのを繰り返す場合もあります。

 

 

他にも色々とありますが、戸建て基礎で使うことはほぼないので、名前だけ挙げておきます。

 

水中養生(すいちゅうようじょう)・湿砂養生(しっさようじょう)・噴霧養生(ふんむようじょう)・膜養生(まくようじょう)・シート養生(しーとようじょう)・保温養生(ほおんようじょう)・断熱養生(だんねつようじょう)・吸熱養生(きゅうねつようじょう)・蒸気養生(じょうきようじょう)・高温高圧養生(こうおんこうあつようじょう)

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