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基礎工事の順番

基礎工事の手順としてはおおまかに以下の流れです。

・地盤調査
・必要であれば地盤改良
・地縄張り(ここで地鎮祭)
・遣り方
・根切り
・砕石
・捨てコン(やらない場合もある)
・配筋
・配筋検査
・型枠設置
・アンカーボルト設置
・コンクリート打設
・養生期間
・型枠バラシ
・仕上げ
・完成


家が完成したら見えない部分ですが、基礎は家の土台となる部分です。
基礎が大事、という言葉の通り、基礎が大事なのです。

順番に見てみましょう。

 

1.地盤調査


地盤調査とは、地盤が硬いかどうか、家を建てても問題が無いか、場合によっては異物が無いかどうかの調査が行われます。
地盤調査は施工を請け負う会社が必ず行うものなので、例えば元々家が建っていたものを壊した場合、地盤調査しなくても家が建っていたのだからいいのでは、と思うかも知れませんが、以前にしっかりとした地盤調査を行っているかどうかの保証は出来ませんので、必ず実施することになります。

 

2.地盤改良


地盤調査の結果、地盤改良が必要と判断されれば地盤改良を行います。地盤改良が必要かどうかは、地域によって多少の差はありますが、土地ごとに違います。

地盤改良の必要あり、となればコストがかかりますので、なるべく無いように祈るしかありません。経験上、改良があるかないかは半々くらいです。

地盤改良の方法も色々とあります。方法によって費用は変わってきます。地盤には、大きく分けて柔らかい層と、固い層(支持層と言います)があり、この固い層(支持層)が、どれだけの深さにあるかどうかで方法と費用が変わってくるのです。

例えば、少し深めの位置に支持層がある場合、表層改良という、セメントを混ぜ込むことで地盤を固める方法があります。これは地盤改良のなかでも軽めの改良となります。

支持層がさらに深い位置になってしまうと、セメントを柱状にして地中に埋め込む柱状改良や、鉄製の杭を打ち込んで、杭の上に家を建てる、というような鋼管杭(こうかんぐい)工法、などの改良工事になることもあります。

 

土地購入時に不動産屋がデータを持っていることもありますが、よほど良心的な不動産屋か、大手不動産屋でなければこのデータは持っていません。

ただし、地盤検査は購入前でも不動産屋がOKであれば行うことは可能です。5万~10万の費用がかかりますが、地盤改良となった場合はもっと多額の費用がかかるので念のため検査するのはありだと思います。

 

地縄張り

地盤改良工事と地縄張りは前後する場合もあります。地縄張りは、設計に基づいて、土地に縄で大体の間取りを示すもの。建築会社が行います。地縄張りをしたあとに地鎮祭を行うことが多いので、間取りの確認は地鎮祭の時におこなうことが多いです。玄関位置や部屋の場所などが間違っていないか、大まかに確認するものなのでこの確認のあとに、きっちりと測って建築工事がスタートします。

最近は、地鎮祭をやらないという場合も多いですが、地縄張りの確認はしてもらいたいので、確認に来た際に、お清めだけする施主さんも多いですね。

 

 

遣り方

「やりかた」と読みます。ここまでは主に施工会社の担当でした(地盤改良は除きます)。工務店とかハウスメーカーの現場監督レベルが、色々と動いているでしたが、ここからは基礎屋さんの仕事になります。

遣り方、とは、基本的には家の位置と水平位置などを正確に決める作業です。建築現場で黄色やピンクの糸が張ってあるのを見たことがあるかも知れません。あれは、正確に家の位置を決めて糸に沿って進めていくという印になります。

遣り方は、ほぼ100%施工責任を負う施工会社が立ち会います。図面をもとに正確に位置を決めないといけません。

設計がシビアな場合、建物の位置がずれてしまうと最悪の場合法律に触れてしまい、住めない、というケースもあり得ます。極端なことを言うと、隣の敷地に建物を建ててしまったり、ということもあり得るのです。

建築で大事なのは基礎、という話をしましたが、その基礎を創る上で、非常に重要なのが遣り方、というわけです。

 

根切り

無事に遣り方が終われば、いよいよ実際に土地をいじっていく工程に入ります。ここからショベルカーや地面を固める転圧機械などが登場します。

最初は、根切り(ねぎり、ねきり)という作業です。根切りひとつとっても、方法が色々とありますが、まずは「地面を掘る作業」と思ってもらえればOKです。

地面を掘らずに、コンクリートを流したとしても、地面ごと剥がれてしまいますし強度がまったく出ません。ですので、地面を掘ってコンクリートがしっかりと定着するようにします。

流し込むための準備をするのが根切りです。基本的には重機を使ってやりますが、重機が入れられない狭い現場などでは手で掘り進めることもあります。

 

砕石(さいせき)敷き

根切りが終わったら、細かく砕いた石(砕石)を敷き詰めます。土のままだとコンクリートで基礎を作ったとしても建物ごと傾いてしまったりする可能性があります。とにかく基礎のコンクリートを作る前に、地面を固くして安定させる必要があるので、ここまで行っている作業は全部、基礎を作るための準備となります。

基礎の基礎とも言える作業なので、ここをおろそかにすると、いくら基礎コンクリートをうまくやったとしても、建物に影響がでてしまいますので、しっかりと作業をしなくてはなりません。

石を敷き詰めたら、今度はそれを固める作業である、転圧(てんあつ)をして、ガッチリ地面を固めます。

 

捨てコン(やらない場合もある)

砕石敷きが終わったら、次は捨てコンと呼ばれる作業となります。これはやらない場合もあるので、やらなかったからといって施工不良というわけではありません。捨てコンとは、基礎を打つ前にコンクリートを薄く流し込んで、表面を平らにする作業のことです。やらなくても実際のコンクリート打設の際にきっちりと施工すれば問題はありません。捨てコンをしたほうが基礎が強くなる、ということでもありませんが、最近は捨てコンをするのほうが多い気がします。その後の作業はやりやすくなりますが、捨てコンが固まるのを待たなくてはならないので、日程や作業工程、あとは基礎屋さんの方針次第ではあります。

建築作業にはこの「捨て」作業が結構あります。本格作業の前に地ならしをする、という感じです。この「捨て」作業をやるかやらないか、がプロと一般の差だなと感じます。

DIYだといきなり作業を始めたりしますが、プロの場合、本当の作業をするまえに、施工場所の地ならしをしたり、やりやすいように準備をしたりします。ひと手間かかりますが、これをやることで仕上がりが綺麗になります。

 

配筋

配筋、とはコンクリートを流し込む前に、鉄筋を配置することです。世の中の鉄筋コンクリートは、ざっくりいうと、鉄の棒を網目に配置し、その上からコンクリートを流し込んで作っています。

鉄筋がないコンクリートは無配筋コンクリートとなりますが、実はコンクリートそのものはそこまで強度の高いものではありません。鉄筋が入って初めて、一般的にイメージする強いコンクリートとなります。

鉄とコンクリートには、それぞれの性質がありまして、2つを組み合わせることでそれぞれの弱点を補っているのです。

・コンクリートは熱に強く、引っ張る力に弱い

・鉄は熱に弱く、引っ張る力に強い

という性質があります。いやいや、鉄も熱に強いでしょ、と思うかも知れませんが、鉄は熱すると変形してしまいます。これは熱に弱い、ということになります。コンクリートブロックも、実は引っ張られると割りと簡単に崩れてしまいます。そのため、熱に弱い鉄をコンクリートでカバーすると同時に、引っ張られる力に弱いコンクリートを鉄がカバーするのです。これが鉄筋コンクリートです。

 お互いがカバーし合う性質があるので、鉄筋コンクリートを作る場合は、鉄が多ければ熱に弱くなり、コンクリートの割合が多くなると崩れやすくなるのです。つまり、鉄筋を多く入れれば丈夫なコンクリートになるか、というとそういうわけでもないのです。

鉄とコンクリートの配分は、法律で厳密に決められています。特に基礎を作る場合は、「網目の格子部分のサイズ」「鉄筋同士を繋げる方法」「繋げる場合の重なる部分の長さ」など、法律上の決まりがあるのでこれに従って鉄筋を配置することになります。

特にアンカーボルトの設置忘れなどは致命的なミスになるので、請負った施工会社がきちんとチェックしなければなりません。

 

配筋検査

配筋検査は、鉄筋が正しく配置されているかどうかを検査します。建築基準法上はこの検査はやらなくても良いですが、住宅瑕疵担保責任保険(じゅうたくかしたんぽせきにんほけん)を適用するために必要な検査です。

ざっくり言うと、建てた家になにかあった場合の保険です。瑕疵(かし)というのは不具合のことで、不動産や建築ではよく使われる言葉です。要するになにか不具合(瑕疵)が合った場合、保険で直せるよ、というものなのですが、それが建築中に間違った方法で施工したから不具合なのか、ちゃんと建築したけどそれでも不具合になっているのか、という見極めをしなくてはなりません。家が建ってしまった後では、どういう不具合があったのか、を見つけるのは非常に難しいです。基礎工事中に間違ったから不具合なのか、それともコンクリートの製品不良なのか、鉄筋が駄目だったのか、家そのものがだめなのか。。

理由を探そうとするといくらでも探せてしまいます。そうなると、なんでもかんでも保険が効くというわけにはいきませんので、保険会社がちゃんと工事されているかどうかをチェックしに来ます。これが配筋検査です。

ちなみに、住宅瑕疵担保責任保険は工事業者が加入するもので、仮になにかあったときにはこの保険をつかって10年間保証がつきます。万が一建てた業者が倒産していたとしたら、施主が保険金を使うことが出来ますので、別の業者に保険金で依頼することが可能です。

この保険加入は事業者の義務ですので、この保険に入らずに家を建てている事業者は違法となります。正直、いまどきそんなところあるのかどうかは疑問ですが、一人親方の工務店に依頼、という場合には念のため確認してください。施工会社が加入するものであって、職人が加入するものではないので、大工に直接依頼、とかだと入ってない可能性もあります。

 

ベースコンクリート打設

配筋検査が完了したら、いよいよコンクリートを打設します。基礎のコンクリートは、大きく分けてベース部分と立ち上がり部分があります。

ベースは平らな部分のことで、地面をコンクリートで覆うイメージです。立ち上がりは建物の壁を作る部分で、地面から30cm以上の高さが必要です。

ベースと立ち上がり部分を一回で施工する基礎屋さんもいれば、ベースと立ち上がりを別々で施工する基礎屋さんもいます。別々で打設するほうが多いですね。

固まってない状態のコンクリート(生コンクリート)は、早く使わないとどんどん固まってしまいます。そのため、コンクリートをどこから調達するか、というのも基礎屋さんの腕の見せどころです。

コンクリートミキサー車(ぐるぐる回るコマのようなものを荷台に乗せている車)をうまく手配しないと、コンクリートの質が悪くなってしまいます。また、天候によっても左右されますのでコンクリートの打設はかなり気を使う工程です。

 

内部立ち上がり型枠設置

ベースコンクリートが固まったら、次は立ち上がりの型枠を設置します。厳密に言えば、配筋検査の前にベースの型枠は土地の周りに設置されています。土地を囲んで配筋がしてある状態です。配筋検査が完了したら、建物内部の壁の部分に型枠を設置していきます。これが内部の立ち上がり部分となります。型枠の設置とコンクリート打設を同じ日に実施する場合もありますが、大抵の場合は型枠を設置した翌日にコンクリート打設となります。

型枠はしっかりと固定しないとコンクリートが流れ出てしまいますし、建築基準法で厚さは12cm以上と決められていますので、この基準をクリアできるように型枠を設置する必要があります。

 

立ち上がりコンクリート打設

ベースコンクリートの打設と同様に、今度は立ち上がり部分にコンクリートを打設します。立ち上がり部分は上に建物が載ることになりますので、綺麗に仕上げをする必要があります。立ち上がり部分の上の部分の表面を天端(てんば)と言いますが、天端を綺麗にならす作業も必要です。打ち込み用のコンクリートだと、「こて」である程度平らにならすことは出来ますが、天端は全体が水平になっていないと建物が傾いてしまいますので、水平にする必要があります。そのため、レベラーという材料を使用して、天端を綺麗にならしていきます。レベラーの施工自体は難しくはありませんが、綺麗に仕上げをするかどうかで今後の手間も変わってきます。

たまに、ガタガタの基礎の現場をみかけたりしますが、大工さんが苦労しそうだな、と思います。基礎屋さんが終われば大工仕事になりますが、大工が基礎の上に土台を載せる際、水平と全体の高さの調整をすることになります。

基礎屋さんの仕事が丁寧であれば、この手間がだいぶ少なくなりますので、大工さんとしても助かりますし、手間が減るということは、それだけ他のことに時間を割けるということになりますので、建物のクオリティがあがる可能性も高いです。

 

アンカーボルトについて

建物の基礎を作る際に、アンカーボルトという金物(鉄の棒)を施工します。これは、基礎コンクリートと一体化させて、最終的には建物とこの鉄の棒をボルトで止めるためのものです。

基礎コンクリートから上に伸びている鉄の棒を見かけたことがあるかも知れません。それがアンカーボルトです。

アンカーボルトによく似た、もっと長い金物も刺さってることがあります。これはホールダウン金物と呼びます。

ホールダウン金物は建物の柱と固定するためのもので、アンカーボルトは建物の土台と接続して固定します。

アンカーボルトは建物と基礎をつなげる、超重要金物ですので、図面にも記載しなければなりませんし、構造計算でもアンカーボルトがいくつ必要か、を問われることになります。

なぜアンカーボルトについてここに記載したかというと、アンカーボルトの施工方法として、「田植え」と呼ばれる施工方法があり、この施工方法があまりおすすめは出来ないからです。

アンカーボルトは基礎にがっちりとくっついていなければなりませんので、コンクリートを流し込む前に、アンカーボルトがセットされているのが理想です。

ただ、アンカーボルトを事前に配筋に固定するよりも、立ち上がり部分のコンクリート打設をしたあとに、上から差し込むほうが施工としては楽なのです。

 

ハウスメーカーでは、この田植えと呼ばれる方式で施工をしているところは無いと思いますが、工務店だとたまに見かけます。見分け方は簡単で、基礎の立ち上がり部分のコンクリートを打つ前に、天端よりも上にアンカーボルトが飛び出しているかどうか、で見分けられます。田植え方式が絶対にダメか、というとそういうことではありませんが、いまどき田植え方式でやっているところはないので、もしやっているとすれば基礎屋さんのレベルを少し疑っても良いと思います。心配であれば基礎配筋が終わった時点で現場を見てみましょう。鉄の棒が上に飛び出していればアンカーボルトがセットされています。

 

型枠バラシ

立ち上がり部分のコンクリート打設が完了したら養生期間(固まる期間)を待って、いよいよ型枠を外します。型枠バラシと呼ぶことが多いです。

とはいえ、そんなに難しい作業ではありませんので、時間もそんなにかかりません。

型枠を外す、ということは基礎の完成を意味するので基礎工程もいよいよ大詰めとなります。

基礎が完成すると、あっという間に建物が立ち上がります。基礎工程の期間が長いというのをおそらく一般的にはあまり知られてないので、なんだか工事がいつまでも終わらないなーと思っていたら、いきなり建物が立ち上がるので驚く方も多いようです。

 

仕上げ~完成

型枠をバラしたら、最後の最後に仕上げをします。コンクリートを固める工程において、コンクリートの仕上がり面がきれいに仕上がらない場合があります。

腕の善し悪しはありますが、気候なども影響するのでなかなか難しいところではあります。建物引き渡し前に最後の最後の仕上げはするのですが、天端部分や外周部分に見た目が悪い部分があれば、手直しをしておきます。

また、水抜き用の穴を開けていた場合、ちゃんと水抜きできてるかどうかも調査します。特に、基礎が通気式ではなく密閉の基礎の場合、水抜き穴がきちんと機能していないと水がいつまでもたまり続けてしまいますので、チェックが重要です。

腕のいい基礎屋さんの場合、仕上げは軽く掃除する程度、という場合もあります。何もしなくてもきれいに出来上がっていればそれで問題ありません。

アンカーボルトやホールダウン金物がきっちり施工されているかどうかチェックして、万が一これらが間違っていた場合、修正の必要があります。戸建て建築は修正の方法も確立されているので、なにか間違ってしまった場合でも何かしらの方法で修正出来ることが多いです。

基礎のアンカーボルトが不足している場合は、最悪の場合は基礎やり直しのケースもありますが、基礎にドリルで穴を開けてアンカーボルトを差し込む、ケミカルアンカーという方法があります。

ただし、ケミカルアンカーをするよりも、事前にアンカーを仕込んであるほうが基礎と一体化するので安心できます。

もし、チェックすることが可能であれば、アンカーボルトの数や場所もチェックするか、施工を請け負っている担当の方に質問すると良いでしょう。

施主はプロジェクトオーナーですので、責任を丸投げにせず、自分でチェック出来ることはチェックしたほうが間違いはありません。

 

ここまで出来上がれば、基礎工事の完了です。いよいよ建物を建てていきます。

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