最初に結論
結論から申し上げますと、太陽光発電で売電をして儲かる、という時代はもう終わっています。
太陽光パネルを載せるという場合は、「災害に備えたい」「環境保護に興味がある」「初期費用はかかっても構わない」という条件が満たせるか、まず考えてください。
単純なお金の損得で考えると、よほど広い家(広い屋根)ではない限り、かかる費用のほうが多いです。
住宅を建てる時に太陽光発電を載せるか否か、おそらくこの問題に多くの人が頭を悩ませると思います。
特に最近ではZEH(ゼッチ)=NET ZERO ENERGY HOUSE(ゼロエネルギーハウス)規格の家造りを政府主導で進めているため、必ずと言っていいほど太陽光パネルをどうするか、という問題にあたるのではないでしょうか?
基本的に、家造りを行う上で何が正解か、というのは無いと思っています。
無論、施工が甘いとか、欠陥住宅などというのは問題外ですが、太陽光を載せても載せなくても、それが施主であるあなたのこだわりならば、それで問題はありません。
ただし、それを判断する上で正しい情報を手に入れて、正しい判断をくださなければなりません。
しかしハウスメーカーにしても、工務店にしても、太陽光について正しい判断をくだせる知識を持っているか、となるとなかなかに難しいところです。
なぜならば、ハウスメーカーや工務店というのは次から次に新しい情報が入ってきて、それらを広く浅く知っていなくてはならないからです。
もちろんそこを勉強するのが仕事ではあるのですが、太陽光についてはなかなか情報量が多く、さらにZEHの話も絡んできて複雑です。
ということで、ちゃんと正しい判断をくだすためにはあなた自身が勉強しなくてはなりません。
これは太陽光にかぎらず、家造り全般に言えることですが、自分で勉強しない限り納得の家造りは出来ないのです。
ここを読めばそれなりに知識が身につくと思いますので、長いですがじっくり読んでみてください。
用語をおさえる。
固定価格買取制度
「太陽光発電した電気は買い取ってもらえる」
という話を間違いなく聞くことになると思います。これは、経済産業省資源エネルギー庁が、再生可能エネルギーの買取制度を作ったからです。
厳密に言えば、再生可能エネルギーとは以下の5つのことを言います。
- 太陽光
- 風力
- バイオマス
- 地熱
- 中小水力
この記事のなかでは、太陽光での発電と再生可能エネルギーをほぼ同じ意味で書きますが、一般住宅では太陽光以外ほとんど関係ないので問題無いかと思います。
さて、政府では再生可能エネルギーを導入することで、環境を保護しようとしています。
しかし、再生可能エネルギーがなかなか伸びていきません。
そこで、まずは「余剰電力買取制度」というものを導入します。
家庭で余った電力を買い取りますよ、という制度です。2010年に始まりました。
電力を余らせるためには、自分で発電をする必要があります。
家庭で発電をするには、太陽光以外の選択肢はほぼありませんので、これにより若干太陽光パネルの設置が進みました。
次に、さらに再生可能エネルギー設備を増やすために、「固定価格買取制度」というものを作りました。
これは、10年間何があろうと同じ価格で電力を買い取りますよ、という制度で2013年に始まりました。
この制度が太陽光パネルを爆発的に普及させました。
下記の図は、資源エネルギー庁が出している資料から抜粋したものです。
この固定価格買取制度のキモは「毎年買取価格が下がる」というところ。
つまり、「早く設置すればするほどお得」というわけです。
よろしいでしょうか?
ここから、よーく頭に入れておいてください。
太陽光パネルの話の時に、売電価格を元にした収支表などを見せられることがあるかと思います。
その売電価格は本当に現在のものでしょうか?
2017年(平成29年)から固定価格買い取り制度はリニューアルされていますが、ちゃんと更新されていますか?
それでは太陽光発電の買取価格を見てみましょう。
最新の買取価格からさかのぼって見ていきます。
ダブル発電などの細かい用語はこのあと説明しますが、全体的に過去になればなるほど値段が上がってるのがわかると思います。
これは、資源エネルギー庁のホームページに載っている情報ですので、もっと詳しく見たい場合は、以下からどうぞ。
経済産業省 資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
いかがでしょうか?
この価格を元に、太陽光パネルの設置料、年間の発電量、買取価格などを計算してみてください。
ダブル発電
買取価格表のなかに、「ダブル発電」という記載があります。
もう一度、表をみてみましょう。
ダブル発電の場合は、買取価格が通常より低いですよね。
そうなると、ダブル発電じゃないほうがお得では?と考えてしまいます。
ところが、そう簡単な話ではありません。
そもそも、ダブル発電とはなにかと言うと、太陽光発電以外の発電システムや蓄電池を併用すること、です。
これは、例えばガスを利用して発電する「エネファーム」や「エコウィル」が該当します。
さらに、昼間に発電して使い切らなかった電気をためておく「蓄電池」を使用することや、電気自動車に電気をためておくこともダブル発電とみなされます。
なぜこのような制度になっているかというと、買取制度は太陽光発電の設置を推進するためのものです。
太陽光発電によって、余った電気(余剰電力)を買取しますから、太陽光をつけてください、という制度なのです。
ですから、本来であれば発電した分は全部使い切って欲しい、というのが本音。
エネファームやエコウィルで発電した電気は、太陽光発電によって作られたものではありません。
ガスで作られた電気を太陽光で作った電気と同じ価格で買ってしまっては、本来の目的から離れてしまいます。
では蓄電池はどうなのか?
これも、本来は太陽光で作った電気はその場で使い切って欲しいというのが本音ですから、余った電気をためておくのは本来の制度の目的からは離れてしまいます。
これらの制度は変更されることもありますし、エネファームと太陽光を併用したほうが、家計や環境には良いかも知れません。
災害時の備えとしては、太陽光、エネファーム、蓄電池の組み合わせはかなりの安心材料ですし、そもそも、なんのために太陽光パネルをつけるのか、を考える必要があります。
ダブル発電の話を深く掘り下げると、エネファームや蓄電池の話にも関わってきて膨大な量になりますので、さらに詳しく知りたい場合は、以下のサイトがおすすめです。
ソーラーパートナーズ ダブル発電は「太陽光発電のみ」より損になる!?
大事なことは、太陽光の話になった時にダブル発電のことを少しでも良いから知っていることです。
例えば、太陽光発電をつけて、蓄電池も設置する予定なのに、ダブル発電ではない料金で計算してしまったら計算が狂います。
なんとなくでも良いから覚えておくことが大事なのです。
ZEH(ゼッチ)=Net Zero Energy House(ネット・ゼロエネルギーハウス)
さて、いよいよZEH(ゼッチ)の話に入ります。
太陽光発電とZEHは切っても切れない関係ですので、言葉の意味は理解しておきましょう。
ZEHについては、大手ハウスメーカーのサイトであれば説明記事がありますので、そちらも読んでみることをおすすめします。
経済産業省の資源エネルギー庁が本家本元ですので、リンクを貼っておきます。
経済産業省 資源エネルギー庁 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/zeh/
ものすごく簡単に言うとZEHとは以下の通りです。
省エネの家にして、おまけに自家発電して、電気代とかゼロにしよう!
という感じです。
ZEHの家と認められるためには、基準を満たす必要があり、その基準はこちら。
この資料は経済産業省からダウンロードが可能です。
サイトはこちら。経済産業省 資源エネルギー庁 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/zeh/
PDF資料はこちら(ダウンロードします)ZEH普及に向けて〜これからの施策展開〜
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/zeh_report/pdf/report_160212_ja.pdf
まず、省エネの家とは何か。
これは、エネルギーロスの少ない家、つまり気密性が高く断熱性能の良い家と思って問題はありません。
例えば大きな窓をつけるとか、断熱性能があまりよくない構造で建ててしまうと、ZEHの家にはなりません。
設計上どうしても、窓を大きくしたいとか、玄関のドアを大きくしたいとか、そういうことでZEH基準から外れる場合があります。
次に、自家発電です。
これは、太陽光パネルをつけることが絶対条件です(2017年現在)
ということで、ZEHの家を建てたいと望むなら太陽光パネルをつけなくてはなりません。
要するに、エネルギーを自給自足出来る家、がZEHの目指すところなのです。
ZEHの話もなかなか奥が深いので、ZEHの話になったときに何を思い出すべきか、だけ覚えておきましょう。
- ZEH基準の家は高い
- ZEH基準にするなら太陽光をつける必要がある
- ZEH基準で認定されれば補助金が出る
このくらいのことを覚えておけば大丈夫です。
特に気になるのは、補助金だと思いますが、補助金はあくまでも「補助」なので、イメージ的には200万の設備つけるために50万くらい補助される、という感じです。
そうなると150万円最初にかかるわけで、だったらキッチンを良くしたい、とかそういう話になると思います。
さらに、ZEHについては認定を受けないとおおやけには「ZEH」とは言えません。
この認定団体があります。それが、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)です。
環境共創イニシアチブ ZEH支援事業について
認定を受けないと「ZEH」にはなりませんので、当然補助金も出ません。
補助金を活用して建てようと考えている場合は必ず、SIIが満たすZEH基準をクリアできるかを確認しなくてはなりません。
ちなみに、そもそもZEH基準の家を建てるための登録基準(ZEHビルダー)がありまして、この登録をしていなければ基準をクリアしても認められません。
つまり、ZEHの家を建てて補助金をもらうには、ZEHビルダーでSII基準を満たすZEH仕様の家を作らなくてはならないのです。
ちなみに、もう一度言っておきますが、ZEH基準は太陽光パネル必須です。
さて、ZEHについては大体OKでしょうか?
ここで、もやっとしている事があると思うので、解決しておきます。
ZEHでもやっとする用語
ZEH=Net Zero Energy HouseのNetってなに?
よーくわかります。私も違和感がありました。
Net(ネット)というのは、「正味(しょうみ)」という意味で、実質、だいたい、というような意味で考えてください。
つまり、ZEHというのは、「実質(だいたい)ゼロ・エネルギーの家」ということです。
完全にゼロ・エネルギーの家じゃないよ、ということ。NZEHだと読めませんから、最初のNは外したのだと思います。
Neary ZEHってなに?
これももやっとしますよね。
先程ZEHは「実質ゼロ」という話をしましたが、Neary(ニアリー)は、おおよそ、という意味です。
正直、ZEHの基準はものすごく厳しくて、都内の狭小地に建てる家は満たせないことがほとんどなのです。
太陽光パネルの設置枚数は屋根の大きさに関わりますので、単純に土地が狭ければ屋根も狭くなり、基準を満たせません。
しかし、政府としては2020年にはZEH基準の家を50%にしたい、という目標があります。
そこで登場したのがNearyZEHです。
おおよそZEH基準なら、それもZEHということでOK、というものです。
ZEHを100%とすると、NearyZEHは75%で満たしていればOKです。
正直、ZEHの話をきちんと理解している人はそうそう多くないと思いますので、建てたあとに後悔しないよう、しっかりと勉強しておきましょう。
まとめ
ここまで5,000文字も使ってしまったので、まとめておきます。
太陽光にパネルについて
- 売電で利益が出る時代は終わり。つけるなら、災害の備え、省エネ、環境保護を目的とする。
- 売電価格は買取価格が年ごとに決められている。計算式に気をつける。
- 太陽光パネルはメンテナンス費用も必要。
- 蓄電池やエネファームは、ダブル発電とみなされる可能性大。
ZEH(ゼッチ)について
- ZEH基準を満たすのはなかなか難しい。
- ZEHには太陽光パネルが必須。
- 補助金をもらうにはSIIの基準を満たす必要あり。
- 構造によってはZEHにならない場合も。
長くなりましたが、以上です。