設計者と建て主(施主)の関係性
設計者側の役割を理解したところで、建て主がわはどのように設計者と向き合うべきか考えてみたいと思います。
あなたが家を建てたいと考えた時、おそらく選択肢は以下の3つ。
- ハウスメーカー
- 工務店
- 設計事務所
上記の3つが一般的な選択肢だと思います。
中に友人が建築士だからお願いするというパターンもあるかと思います。
どのパターンを選んだとしても、最も重要な事は「パートナー」として付き合えるかどうか、です。
家造りは建てて終わりではありません。
むしろ、建て終わったあとのほうが付き合いとしては長くなります。
そして何よりも、家は数十年住み続けるものです。
あなたが10年後、20年後、どのような家族構成にしたいか、生活をどのようにしていきたいのか、で設計が変わってくるということです。
つまり、あなたの将来を話せる相手かどうか、が設計者として最も重要なのです。
裏を返せば、建て主であるあなたが、全てをさらけ出すくらいの気持ちで家造りにかかわらないと、満足のいく家は立てることが出来ません。
家は、気に入らないから買い換えたり、気軽にデザインを変更したり、ということが出来ません。
つまり、設計者への依頼は、一点もののオーダーメイドなのです。
なかには、金を出すんだから満足のいく提案をしろ、というような態度の建て主さんもいます。
すでに作られている商品であれば、お金を出せばすぐに手に入ります。
しかし、家造りは全く違います。
家造りにおいて、決定権をもっているのは建て主であるあなたなのです。
設計者や、営業、コーディネーター、現場監督、職人は、全てあなたの家造りの手伝いをしているだけです。
これをよーく頭に入れておくと、家造りへの姿勢が変わってくると思います。
本サイトでは、家造りにおいては建て主(施主)自身が勉強しないといけない、と色々なところで主張しています。
これは、ハウスメーカーや工務店は、あくまでも工事を請け負う立場であって、売る立場では無いからなのです。
もちろん、設計者はあなたが自分でも気づいていない本音を引き出し、隠れた要望を見つけようと努力はします。
しかし、もしもあなた自身が壁を作ってしまっていたら、設計者が本音を引き出すことは難しくなってしまいます。
建て主の想いを引き出す方法として、設計者は色々な方法を試します。
最も一般的な方法としては、間取りの希望、キッチンの大きさ、浴室の大きさ、設備のグレードの希望などを聞いていく方法です。
最近では、インターネットから色々な情報を手に入れることが出来ますので、建て主であるあなた自身も様々な要望をすでに持っていることでしょう。
中には、希望のレイアウト図面を持参する方もいらっしゃいますが、多くの場合、そのまま使うことは出来ません。
ほとんどは、法律的な問題をクリアできてないことと、構造上の問題をクリア出来ていないことが理由です。
しかし、ここで注意が必要なのです。
法律的な問題と構造的な問題だけならば、手直しをすれば建築可能な設計図になります。
ただし、要望をまとめたものだけでは、本当に建て主が住みたい家になっていないことがあるのです。
もしもあなたが圧倒的に自分の設計に自信があり、絶対に文句を言わないということであれば、そのままその家を建てるのも良いかも知れません。
法律的な部分と構造的な部分は、どうしても経験値が必要となってきますので、そこは設計者なりコーディネーターに任せれば良いでしょう。
この方法であれば、あなたは自分の将来をさらけ出す必要もありませんし、自分がどんなものが好きなのか、ということも知らせなくても大丈夫です。
しかし、本当にそれで良いのでしょうか?
あなた自身が気づかない要望は実はたくさん隠れていたりします。
経験豊富な設計者は、あなたの家族構成、年齢、生活スタイル、子どもの部活動、塾通い、好きな食べ物や趣味、ありとあらゆる情報を総合して、設計に反映させます。
もちろんあなたの要望も組み込んだ上で、です。
だからこそ設計者はあなた自身のことを知りたいと思っていますし、建て主であるあなたは設計者に何もかもさらけ出すつもりで、話し合っていかなくてはならないのです。
そういう意味では、長年付き合っている友人や知人が設計者である場合は、ある程度あなたの趣味嗜好を知っているので良い家が建つ可能性は高いのですが、友人であるからこそ知られたくない部分もあったり、話しにくい部分もあると思います。
ですので、あなたが「パートナー」として長年付き合える、設計者を探すことは非常に重要なことなのです。
そのためには、何人もの設計者と話す必要がありますし、メーカーや工務店によっても設計コンセプトが違ってきますので、何社も回る必要があります。
設計事務所の場合は、そもそもの設計思想を掲げているところがありますので、その思想をまずは知ることも重要になるでしょう。
例えば、無垢材を使用した家造りをしている、自然との調和を重視している、プライベート空間を大事にしている、という具合です。
使用している材料によっても家造りのコンセプトは違ってきますので、建て主であるあなた自身がしっかりと選択をしなくてはなりません。
そのためには、家が必要になった段階では実はすでに遅いのです。いますぐに、家造りについて考え始めてください。
必要な情報はいくらでも手に入れることが出来ます。
実際に建てる、という段階になって良いパートナーを見つけるためには、あなた自身が何が要望なのか、をある程度把握しないといけないのです。