土地から探す場合に必要なことは?
家を建てるための土地探しから始める場合、最も注意しなくてはならないのはその土地に家が建つかどうか、です。
家の設計は土地の条件によって大きく左右されますので、しっかりと見極めをしなくてはなりません。
では、実際に土地を探した際にどのような条件を考えることが必要なのか、見てみましょう。
例)77平米の第一種低層住居専用地域の土地を購入する場合
土地を探す場合は色々と方法があると思いますが、どの方法で探したとしても最終的には土地の情報が掲載されたパンフレットなりチラシなり、インターネットの情報をみることになります。
今回は一例として、以下の土地を取り上げてみます。
インターネットサイトなどでもよく見られる形式の情報です。
まずは、書かれている土地の情報を見ましょう。
そうすると、この土地は第一種低層住居専用地域で、建ぺい率は60%、容積率は150%。
公道(道路)は東側にあって、その道路の幅が6メートルであることが、この画像からわかります。
まずよくわからないのが、第一種低層住居専用地域という表記です。
実は、土地というのは「用途地域」という地域分けがされているところがほとんどです。
用途地域は、都道府県であったり、市町村であったり、各自治体が条例で決めたりしますが、とにかく、土地を見つけたら「用途地域は何か?」というのを思い出す必要があります。
なぜなら、用途地域が土地の条件区分の基本中の基本だからです。
第一種低層住居専用地域とは?
では、今回の第一種低層住居専用地域というのはどういうものでしょうか?
用途地域は、実は12種類あります。
この内、家を購入するときに関係有るのは11種類です。
覚える必要は全くありませんが、せっかくなのでどんなものがあるかざっくり説明します。
- 第一種低層住居専用地域
- 閑静な住宅街。高級住宅街がこれ。基本的には住宅しか建てられない。生活に必要な小さな店舗、小中学校、診療所などはOK。コンビニも基本ダメ。2階建ての家が基本。
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種低層住居専用地域の規制が少し緩む感じ。コンビニもOK
- 第一種中高層住居専用地域
- 中高層住宅(マンション、アパート)もOK。そこそこの病院、大学、3階建て以上の建物も可。床面積500平米までの店舗も作れる。
- 第二種中高層住居専用地域
- さらに1,500平米までの店舗や事務所もOKになる。スーパーなども建築出来る。
- 第一種住居地域
- 3,000平米までの店舗、事務所、ホテルも建築できる。そして小さな工場も建築出来てしまう。中規模のスーパーや、運動施設、事務所も建築可。
- 第二種住居地域
- ここまでくると10,000平米の店舗もOK。ホテル、パチンコ屋、カラオケボックス、大きめのスーパーもOK。郊外の駅前やロードサイド店舗が並ぶ幹線道路沿いがこのイメージ。
- 準住居地域
- 第二種住居地域のパワーアップ版。今度は倉庫も建てられるようになる。宅配便の倉庫基地があったりする地域はこれ。ここまでが住宅系の用途地域。家を建てるなら、ここまでの用途地域内を選ぶと良いです。
- 近隣商業地域
- 駅前の商店街。家を建てて住むこともできるが、商店街に住むというイメージをすると良い。利便性は高いが、居住環境としては騒がしいかもしれない。基本的に、業務の利便性を図る地域なので、住環境の考慮はあまりされない。延べ床面積の規制も無い。
- 商業地域
- 近隣商業地域のパワーアップ版。大規模な工場以外なら何でも建てられる。都心部の繁華街やオフィスビル街をイメージ。家も建てられるが、隣に突然イオンが出来るかもしれない。
- 準工業地域
- 環境悪化や危険性の恐れのない軽工業の利便性を図る地域。家も建てられるが、周囲は工場だらけになる可能性が大きい。
- 工業地域
- 工業の業務の利便性を図る地域。どんな工場でも建てられる上に、住宅も建てられる。学校や病院、ホテルは建築不可。住宅がある工場地帯などがこれ。
- 工業専用地域
- 工場ならばどんな工場でも建築OK。他のものは建ててはいけない地域。石油コンビナートなどが立ち並ぶ湾岸地域がこれにあたる。住宅も建てられない。
というわけでざっくり見ましたが、今回の土地をもう一度見てみましょう。
第一種低層住居専用地域ですね。
ということは、住むには良さそうな環境だということがわかります。
ただし、第一種低層住居専用地域の場合はコンビニも基本的にはNGなので、それって本当に便利か?となると人それぞれ。
駅徒歩3分の閑静な住宅街、と記載がある通り閑静な住宅街なのでしょう。
駅から3分で閑静な住宅街ということは、少なくとも商店街が駅前に広がっているような地域ではなさそうですね。
などと考えながら、建ぺい率に目を向けます。
建ぺい率とは?
建ぺい率とは、その敷地にどのくらいの大きさの建物を建てられるか、というルールです。
今回の場合は60%となっておりますので、77.41平米で23.41坪なので、以下のように計算します。
【建築可能な1階の床面積】
平米数:77.41×0.6=46.446平米
坪 数:23.41×0.6=14.04坪
これが、実際に土地建てても良い面積となりますので、これを先ほどの図面に合わせると大体こんな感じです。
赤く塗った部分が、建物が建てられる範囲。
前面部分は駐車場にする分には問題ありませんし、道路側ではなく裏側に庭を作ってもOK。
とにかく、建ぺい率は家を建てる場合に、どれだけの大きさの家を建てられるか決めるものなので超重要です。
容積率とは?
さて、次に容積率を見てみましょう。150%となってますね。
これは、延床面積がどのくらい作れるか、つまり、全部でどのくらいの床を作れるか、という意味。
どのように計算するかというと、敷地面積の150%の数字を出せば良いだけです。
もう一度、同じ図です。
【建築可能な延床面積】
平米数:77.41×1.5=116.15平米
坪 数:23.41×1.5=35.115坪
これが、実際に建てられる延床面積。
つまり、2階建てなら1階と2階の床面積の合計になります。
先ほど、建ぺい率から算出した建築可能な1階の床面積は46.446平米でした。
そして、建てても良い延床面積は116.15平米ですから、116.15-46.446で残りは69.704 となります。
ということは、2階に1階と同じ大きさのものを重ねても大丈夫そうです。
まだ、容積率に余裕がありそうです。
116.15(建てても良い延床)-92.892=23.258
23平米ほど余ってますね。ということは以下のような建物が作れるはず。
建ぺい率も容積率も使いきらないともったいないので、このように使い切りたいですね。
ところが、ここで用途地域がまた絡んできます。
用途地域はそれぞれ、高さに関する制限や、日照時間に関する制限があるのです。
これは不動産屋が出す資料には載っていません。
厳密に言えば載っているのですが、それは全て「用途地域」に含まれているのです。
不動産屋だけを頼りにしてはいけない
つまり、高さ制限があるなんて聞いてないよ!と言ったところで、いやいやお客様、ここに「第一種低層住居専用地域」って書いてあるじゃないですか。
第一種低層住居専用地域は高さ制限10mのものしか建てられないんですよ、と言われて終わりです。
さらに、前面道路の幅によっても容積率が違ってくるのです。
しかも、これらは建築基準法の問題なので、宅建士の資格を持っている担当者ならわかりますが、そうでない不動産屋は知らなかったり、普段使わないので忘れていたりすることが多いのです。
こういう問題があるので、家を建てる前提で土地を購入する場合は、信頼のできる建設会社に必ず聞くべきなのです。
ちなみに、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域には絶対高さ制限があります。
10mもしくは12mを超える建物は建てることが出来ません。
その他にも色々と制限はあるのですが、とりあえずこれがまず思い浮かばないとマズイです。
ということは、先ほど容積率をいっぱいに使って3階建てにしましたが、2階建ての標準的な高さが屋根を含めて8mになるので、もしかすると難しいかも知れません。
さらにさらに、この図面では公道が東側にあり、北側に道路がありません。
建物を建てる時は、北側斜線制限という制限があります。
北側が道路なのか、隣地なのか、どのくらい後退しているのかによっても建てられる高さが変わってきます。
理想の家は建つのか?
今回の土地の場合高さ制限がありますので、三階建てはまず難しいかもしれない、ということがわかります。
さらに、建坪が14坪ですから、46平米です。46平米は、約27畳ということになりますので、水廻りや玄関を考えると6畳間が3つということになるでしょう。
LDKにするならば、LDKと和室という形になると思います。
同じものを2階に建てたとすれば、バルコニーなどを考えると3部屋になりますので、4LDKが限界ということになります。
もしも、5LDKにしたいとか、広い土間が欲しい、ウォークインクローゼットが欲しい、ということになると、今回の土地では難しいかもしれない、ということになるのです。
長くなりましたが、図面を見るときに、まず気をつけて欲しいのは用途地域です。
そして、建ぺい率と容積率を見るようにしましょう。
いくら土地が広くても、建ぺい率や容積率の制限が厳しい地域だと理想の家が建たない可能性があるのです。